日銀が政策金利を1.25%程度に引き上げてから、最初の週が始まった。新しい金融市場調節方針が適用されるのは24日(木)。そしてその24日は、東京の現物市場が今週はじめて値段をつける日でもある。21日から23日までの3日間、日本の上場市場は開かない。

この3日間、日本の国債の値段はどこにもない。日銀が何を決めたかより、この空白のほうが今週の話である。

決定の中身は7対2

日本銀行が18日11時54分に公表した「金融市場調節方針の変更について」を読む。無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す、というのが新しい方針である。賛成7、反対2。

あわせて、補完当座預金制度の適用利率が1.25%、基準貸付利率が1.5%とされた。補完当座預金制度は、日銀に置かれた当座預金のうち所要準備額に相当する部分を除いた残高に付利する仕組みである。基準貸付利率は補完貸付制度の適用金利で、日銀が資金を貸すときの金利にあたる。公表文の脚注は「新たな金融市場調節方針は、翌営業日(9月24日)から適用する」と書いている。18日は金曜日である。翌営業日が24日(木)になるのは、21日から23日が休みだからだ。日銀自身の文書が、東京の3連休を先に前提にしている。

反対したのは浅田統一郎委員と佐藤綾野委員である。浅田委員は、足もとの消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率が2%を下回るなか、経済の状況も必ずしも強いとはいえない点を挙げ、方針を据え置くことが望ましいとした。佐藤委員は、経済・物価情勢が現時点でこれまでと比べて大きく加速している状態にあるわけではないとして、このタイミングでの利上げは適切ではないとした。

公表文は先行きにも触れている。「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」。ただし調整のタイミングとペースは決めていない、と読める書き方である。7月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート、7月31日公表)は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が2026年度後半以降に2%をはっきりと上回る水準まで伸び率を高め、基調的な物価上昇率が2026年度後半から2027年度にかけて目標と概ね整合的な水準になると見込んでいる。

決定後の市場は、利上げの方向とは逆に動いた。朝日新聞と共同通信はいずれも、決定のあと円が約1円下落し、一時1ドル=157円台をつけたと報じている。日経平均は上昇した。朝日新聞は、植田和男総裁が今後の利上げペースについて明言しなかったことを受けて市場が動いたと書き、共同通信は、今後の利上げが簡単ではないと市場で受け止められた可能性があると書いている。朝日新聞はまた、10日の欧州中央銀行、16日の米連邦準備制度理事会に続く動きで、日米欧が同じ月に利上げするのは2006年以来だとしている。

財務省の表は17日で止まっている

ここからが本題だ。日本の長期金利の公表値は、財務省が毎営業日つけている。その9月分のファイルを21日朝に読むと、最後の行は17日、10年債で2.993%だった。

ファイルが最後に書き換えられた時刻は、17日23時30分(グリニッジ標準時)。日本時間では18日の午前8時30分にあたる。日銀が決定を公表したのは同じ日の11時54分だから、この更新は決定より3時間以上前に書かれている。

18日の国債利回りの公表値は、存在しない。決定日の東京市場がどうだったかを、財務省の数字で確かめる方法は、いまのところない。

ここは丁寧に書いておく。18日の長期金利が何%だったかを伝えた記事はある。ただしそこで引かれている数字は、日本相互証券などのリアルタイムの気配であって、財務省が公表した基準値ではない。デスクが財務省のファイルに見つけられなかった水準——3.025%、3.041%といった数字——は、本稿では使わない。「利上げのあとに3%を下回った」とも書かない。下回ったかどうかを示す公表値が、まだないからである。

3%台に乗ったのは2日だけ

読めるのは17日までの値段である。財務省の表から今月分を抜き出すと、こうなる(単位%、9月17日までの公表値)。

年限8月31日9月1日9月15日9月17日
1年1.5021.5271.5701.581
2年1.7431.8021.8611.868
5年2.2332.2802.3382.322
10年2.9432.9873.0282.993
20年3.8153.8593.8653.824
30年4.0924.1314.1064.047
40年4.0944.1454.1054.036

10年債が3.000%以上をつけた日は、今月は2日しかない。2日の3.006%と、15日の3.028%である。15日が今月の高値で、その翌営業日からは2.998%、2.993%と3%台を離れている。決定の前の話である。

同じ表の長期系列をさかのぼると、10年債が3.000%以上だった最後の日は1996年9月6日(3.06%)だった。この列は1986年7月5日から続いている。2025年の最高値は12月22日の2.073%で、2026年は8月31日まで一度も3%に届いていない。9月15日の3.028%は、この表のなかでは1996年9月以来30年ぶりの水準にあたる。

一部の集計は「1995年以来」と書く。財務省の表が示すのは1996年9月6日である。日銀の公表文にも、この水準を歴史的に位置づける記述はない。

超長期はもっと単純だ。30年債と40年債は、財務省の表のなかで2026年より前に4.000%以上をつけたことがない。30年債の列は1999年9月2日から、40年債の列は2007年11月6日から続いている。30年債が4.000%以上になった最初の日は2026年5月18日(4.000%)、40年債も同じ5月18日(4.006%)である。25年債の列(2004年3月22日から)にも2026年より前の4%台はなく、最初は5月19日(4.028%)だった。

そして今月、この超長期は下がった。8月31日から9月17日までの変化をとると、2年債は1.743%から1.868%へ0.125ポイント上がり、10年債は2.943%から2.993%へ0.050ポイント上がった。同じ間に30年債は4.092%から4.047%へ0.045ポイント、40年債は4.094%から4.036%へ0.058ポイント下がっている。2年と30年の差は2.349ポイントから2.179ポイントへ、0.170ポイント縮んだ。

短期が上がって、超長期が下がった。今月の日本の債券市場は、そういう形をしている。

入札がつけた値段

財務省は入札結果も公表している。9月にあった4本を並べる(金額は10億円、利回りは%)。

入札日銘柄応札額落札額応札倍率平均落札利回り最低落札価格の利回り
9月1日10年債(第383回)6,538.51,989.63.292.9953.011
9月3日30年債(第91回)1,728.1456.23.794.0794.100
9月8日5年債(第187回)6,554.31,915.43.422.2392.248
9月15日20年債(第197回)2,131.3532.14.013.8563.869

応札倍率は、財務省が公表した応札額を落札額で割ったデスクの計算である。日本の国債入札ではこの倍率は構造的に高く出るので、4倍という数字をそのまま「需要が強い」と読むことはしない。同じやり方で米国の10年債と入札を読んだ記事がこちらにある。

20年債の入札は15日、10年債が今月の高値3.028%をつけたのと同じ日におこなわれた。平均落札利回りは3.856%で、同日の20年債の公表値3.865%をわずかに下回っている。財務省の記録では、最低落札価格での応札に対する配分率は52.24%だった。

誰が買ったかは、この表からは分からない。見えるのは値段だけである。水準は見えて理由は見えない、という書き方は、金の反落を扱った前稿でも同じだった。

東京は3日開かない

JPX(日本取引所グループ)の市場休日カレンダー(更新は2026年2月6日)を見る。9月21日は敬老の日、22日は国民の祝日に関する法律第3条第3項による休日、23日は秋分の日である。カレンダー自身が「2026年9月22日は、国民の祝日に関する法律第3条第3項に基づく休日である」と注記している。東京の現物市場は21日から23日まで開かない。次の取引は24日(木)。

この3日間、値段をつける場所がない。日銀の新しい方針が効き始めるのも同じ24日である。市場が最初に値段をつけられる日と、新しい金利が効き始める日が、同じ日になった。

サイトのティッカーは、21日7時15分(香港時間)の時点でドル円を157.89と記録している。変化率は0と入っているが、これは「変わらなかった」という意味ではなく、「変化率が出ていない」という意味である。読めるのは157.89という水準のほうだ。日経平均は65,018.73(+1.38%)と表示されているが、これは東京が最後に開いた日の水準である。

香港の読者にとって

香港の読者にとって、日銀の1.25%は遠い話ではない。円で資産を持っている人、円建てで借りている人、日本の国債を組み入れたファンドを持っている人にとって、今週は値段が更新されない週である。次に値段がつくのは24日になる。

香港自身の金利がどう動くかは、日銀ではなく米金利と連絡為替相場制で決まる。米債利回りが香港の拆息(HIBOR)と封頂息率に届くまでの経路は別稿で扱った。ここで確認しておきたいのは、日本の10年債が3%台に乗ったという見出しを見て日本のデュレーションを値踏みするなら、その3%が公表値かどうかを先に確かめたほうがいい、という点である。今月の公表値で3%以上だったのは、2日の3.006%と15日の3.028%の2日だけだ。

次の値段

24日(木)。日銀の新しい方針が効き始め、東京の現物市場が開く。財務省の表に18日以降の行が加わるかどうかも、この日に最初の確認ができる。

25日には流動性供給入札(残存5年超11年以下)、29日には40年債、30日には2年債の入札が予定されている(財務省の9月入札カレンダー)。超長期の需要が値段でどう出るかは、29日が最初の材料になる。

10月1日8時50分、日銀は9月会合の「主な意見」を公表する。7対2で反対に回った2人が何を残したかが、そこに載る。

そして10月29日(木)と30日(金)、日銀は次の金融政策決定会合を開く。日銀自身のカレンダーによれば、今回は「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の基本的見解が30日に公表される。基調的な物価上昇率が2%程度に着地するのか、それとも上振れするのかを、日銀自身が数字で示す番になる。