10月1日から20万円へ
出入国在留管理庁は2026年9月下旬、永住許可の申請手数料を現在の12万円から20万円に引き上げると発表した。この改定は2026年10月1日に施行される。改定率は約67%に相当し、複数の家族構成員がいる場合は合計コストが大きく膨らむ。
この手数料改定は1989年以来、最大の引き上げとなる。国際税務アドバイザーの間では、改定前申請に殺到する可能性が指摘されている。9月30日までに申請を提出した案件は従前の12万円が適用される。申請から審査完了までは平均4~6か月要するため、確実に旧料率での申請を希望する者は9月中に基本書類を揃える必要がある。
申請日ではなく「受け付け日」が基準
重要な点は、改定日時点で「未審査」の案件が対象となることだ。既に申請受け付けされた案件は、現在処理中であっても旧料率(12万円)のままとなる。問題は、オンライン申請システムでは受け付けタイムスタンプが正確に記録されるが、書面申請では受け付け担当者の判断で若干の日付ズレが発生する可能性がある、という点である。
不確実性を避けたければ、9月25日までに申請書類一式を提出することが推奨される。出入国在留管理庁の各地方局および支局の受け付け時間は原則として平日09:00~16:00(昼休み12:00~13:00)。オンライン申請であっても受け付けシステムがメンテナンスの対象となるため、9月末日の直前申請は避けるべきだ。
永住許可と税務居住地
日本に永住許可を取得した外国籍者も、税法上は「日本国内に住所を有する者」として扱われ、所得税の課税対象となる。改定後の永住許可費用20万円は、個人の税務申告では一般的に控除対象にはならない(滞在地変更に伴う直接的な引っ越し費用ではないため)。
ただし、法人設立を伴う事業移転や、家族信託を通じた資産移管を行う場合は、関連費用として損金処理される可能性がある。国税庁の税務手引き「在留資格変更時の税務上の取扱い」(2024年4月版)では、永住許可取得後の最初の申告では別途書類提出が求められることが明記されている。
二国間課税回避条約の適用
永住許可取得時に、かつて居住していた国(例えば香港、シンガポール、米国)との間で租税条約が存在する場合、183日ルールが適用される。つまり、永住許可を得ても日本に物理的に183日未満の滞在にとどめれば、その国での税務居住を維持できる可能性がある。
ただしこのルールは申告義務までは免除しない。日本の税務署に対しては「日本国内に住所を有する者」として扱われるため、毎年の申告義務は継続する。実質的な税負担軽減を狙う場合は、事前に国際税務弁護士の相談が必須となる。これを無視し、二重申告を避けるために日本への申告書提出を怠ると、脱税と見なされるリスクがある。
香港とシンガポール居住者への影響
香港と東南アジア一帯に家族が分散している層にとって、永住許可は単なる滞在資格ではなく、日本での銀行口座開設や不動産取得の実務的な前提条件だ。改定前の申請集中化により、9月中の申請受け付けは通常より遅延する可能性が高い。特に地方局での処理は東京・大阪よりも日程に余裕がない。
改定による追加負担は1世帯当たり8万円だが、配偶者と成人した子2名がそれぞれ申請する場合は計24万円の追加負担となる。この水準になると、申請タイミングの判断が家族会議の議題になる。出入国在留管理庁の統計によれば、2025年度の永住許可取得者は前年比で12%増加しており、改定を機に申請数はさらに増加するとみられている。
来年度の政策動向を注視
出入国在留管理庁は、この手数料改定に加えて2027年中に複数の在留資格基準を見直す方針を示唆している。特に高度人材向けの「高度専門職」資格の学歴要件が引き上げられる見込みだ。また、配偶者帯同時の所得要件もインフレを反映した改定が検討されている。
永住許可取得を検討している層は、10月1日の改定日を基準に、現在のコスト構造で申請するか、あるいは2027年以降の制度変更を見据えて判断を先送りするか、判断を迫られている。より詳しい情報は、出入国在留管理庁の公式サイト、または各地方局の相談窓口(原則無料)で確認できる。来月中旬には、この改定に対応するための国会での補正答弁が予定されており、小規模事業主向けの特例措置が追加される可能性もある。国際的に家族の住まいを構成し直す決定は、単なる移住ではなく、複数年にわたる税務・財産計画の起点となる。正確な情報に基づいた判断が必須だ。