2026年9月14日、岐阜県高山市越後町の丘に「ヒルトン高山リゾート」が開いた。運営するのは株式会社JR東海ホテルズ。JR東海グループのホテル会社である。もとの名前は「ホテルアソシア高山リゾート」だった。建物は同じで、看板が変わった。ヒルトンの旗艦ブランド「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」としては岐阜県で初、東海地方ではヒルトン名古屋、コンラッド名古屋に続いて3軒目にあたる。

客室は全283室。だが、いま予約できるのは91室しかない。

283室のうち、いま売れるのは91室

開業時に営業を始めたのは91室で、残りは改装工事の進捗に合わせて順次開放される。全283室がそろうのは2027年春の予定だ。JR東海ホテルズが2026年8月24日に出した発表資料に、そう書いてある。開業日そのものは、同社が6月1日から宿泊予約を受け付け始めた時点で公表されていた。

客室は10タイプ。35平方メートルのゲストルームと46平方メートルのデラックスルームが中心で、70平方メートル以上のスイートは5室にとどまる。4階にはエグゼクティブラウンジを新設した。エグゼクティブルームとスイートの宿泊者、それにヒルトンのロイヤルティプログラム「ヒルトン・オナーズ」のダイヤモンド会員が、チェックインから朝食、アフタヌーンティー、イブニングカクテルまで使える。

区分広さタイプ
スタンダード(ゲストルーム)35m²ツイン/キング/和室/アクセシブル
デラックス46m²ツイン/キング/トリプル/和洋室
エグゼクティブ非公表4階ラウンジの特典付き
スイート70m²以上プレミアム/デラックス、全5室

出所は株式会社JR東海ホテルズの2026年8月24日付発表資料と、ホテル公式サイトの客室案内。283室という数字は、いま売れる部屋の数ではない。

同じ発表資料には、館内の数字も並ぶ。ダイニングルーム「ヴィスタス」156席、日本料理「和氣」152席、鉄板焼「岳」14席、ラウンジ&バー「シーナリー」。温泉は5階「望の湯」と7階「天の湯」の2フロアに分かれ、露天風呂10種類と内湯2種類、サウナ、湯面がひとつにつながるように見えるインフィニティバスを備える。貸切露天風呂は6階、個室温泉は4室。ホテルは標高640メートルの丘に立ち、JR高山駅から無料シャトルバスで約8分、無料駐車場は200台ある。

増えた町で、香港だけが3割超減った

高山市観光課が2026年2月にまとめた「令和7年 高山市外国人観光客宿泊統計」を読むと、2025年に市内へ泊まった外国人は97万8,312人。前年の76万9,743人から27.1%増えて、過去最多である。市内の全宿泊者数は232万4千人で、外国人が占める割合は42.10%に達した。前年は34.23%だった。

国・地域別の表で目を引くのは香港だ。

国・地域2024年2025年前年比
台湾104,368人119,595人115%
中国62,780人91,906人146%
アメリカ47,430人58,775人124%
スペイン42,686人52,730人124%
イギリス31,947人37,760人118%
香港49,913人32,676人65%
合計769,743人978,312人127%

出所は高山市「令和7年 高山市外国人観光客宿泊統計」(2026年2月)で、主要市場を抜粋し、合計は同統計の計をそのまま置いた。

香港は49,913人から32,676人へ減り、率にして34.5%の減少になる。この表で前年比が最も低いのが香港の65%で、3割を超えて減った市場は香港だけだ。台湾が119,595人で最大、中国が91,906人で続き、以下アメリカ、スペイン、イギリス、タイ、オーストラリア、香港の順に並ぶ。

数字の読み方には但し書きが要る。この統計は市内宿泊施設からの聞き取り調査であって、宿泊者全員の申告ではない。市自身が調査方法の欄でそう断っている。だから32,676人というのは、香港から高山を訪れた人の総数ではなく、市内の宿泊施設が把握した人数である。それでも、同じ調査方法で前年と比べている以上、方向は読める。

値段——日帰り温泉1,500円、宿泊税100〜300円

新しい宿の値段は、公式サイトの表に全部は出ていない。部屋の料金は予約画面の中で日付ごとに動く。だが、発表資料とホテル公式サイト、そして高山市の条例を突き合わせると、宿泊以外にいくら出るのかは組み立てられる。

支払うもの金額出所
日帰り温泉(大人)1,500円JR東海ホテルズ 2026年8月24日
日帰り温泉(小学生)600円同上
日帰り温泉(3才〜未就学)400円同上
個室温泉 45分4,400円から同上
宿泊税(1泊1万円未満)100円高山市
宿泊税(1泊1万円以上3万円未満)200円高山市
宿泊税(1泊3万円以上)300円高山市

温泉は宿泊者でなくても使える。日帰り利用の受付は7時から11時までと13時から21時まで。個室温泉は4室で予約制。宿泊者は13歳以上が大人と同料金になる、とホテル自身が予約画面に書いている。

宿泊税は高山市が2025年10月1日に導入した法定外目的税である。市議会が条例を可決したのは2024年12月20日、総務大臣の同意は2025年3月21日。旅館業法の許可を受けた旅館・ホテル・簡易宿所のほか、住宅宿泊事業の届出をした民泊も対象になる。税率は1人1泊の宿泊料金に応じて100円、200円、300円の3段階。料金は素泊まりの代金とサービス料で、食事代や消費税、入湯税は含まない。小学生以下と、修学旅行の児童・生徒および引率者は免除される。市が示す平年度の収入見込額は約4億円で、使途は観光振興、環境保全、文化振興、危機管理、組織運営の5事業とされる。

ホテル自身も2026年7月27日付で「宿泊税についてのお知らせ」を公式サイトに掲げ、三段階の税額と免除の範囲を案内している。宿泊者は宿泊料金と一緒に施設へ払い、施設が翌月末までに市へ納入する建て付けだ。

香港の読者にとって

高山は、香港から遠い町ではない。中部国際空港から名古屋に出て、JR高山本線の特急で高山駅へ。駅からホテルまでは無料のシャトルバスで約8分、駐車場は無料で200台ある。予約はホテル公式サイトとヒルトンの予約サイトから入る。秋の高山は紅葉と祭りで混む。宿の在庫が薄い時期に、新しい上級宿の在庫が薄いという事実は、そのまま計画の話になる。

この秋の意味は三つある。第一に、9月14日に開いたばかりで、売りに出ている部屋は91室しかない。第二に、町全体の需要は記録水準にある。2025年の市内の全宿泊者数は232万4千人、うち外国人が42.10%を占めた。月別の外国人宿泊者は10月の11万2,775人が最も多く、4月は外国人が全宿泊者の61.04%に達した。第三に、香港からの宿泊者だけが減っている。

三つめの数字は両義的だ。香港から来る人が減っているということは、同じ町が香港の人で埋まるわけではない、ということでもある。だが、なぜ香港だけが減ったのかは本紙では確認できなかった。査証の話でも、航空便の話でも、調査の取り方の話でもありうる。市の統計は原因に触れていない。数字だけを置いておく。

部屋数を絞って値段を守る宿と、部屋数を増やして稼ぐ宿は、別の商売である。前者の論理は「静かなる贅沢」の経済学で扱った。高山の新しい宿は、283室という後者の側に立つ。91室で開き、283室で完成する。その途中の値付けがどうなるかは、まだ誰も見ていない。

次に見るもの

最初の関門は2026年10月9日と10日の「秋の高山祭(八幡祭)」である。櫻山八幡宮の例大祭で、毎年10月9日、10日に行われる。国指定重要有形民俗文化財の屋台11台が曳き出され、例年約18万人が訪れる。新しいホテルのロビーは、高山祭の屋台と手筒花火をモチーフに設計された。祭りの2日間、そのロビーが実際にどう機能するかは、まだ見られていない。

その次は2027年春。改装が終われば全283室がそろう。高山市の外国人宿泊統計は令和8年(2026年)分が2027年2月ごろに公表される見込みで、そこで香港の数字が戻るかどうかが、この町の次の読みどころになる。