令和8年(2026年)都道府県地価調査は9月16日に国土交通省から発表された。調査基準日は7月1日。評価地点は全国21,466カ所(宅地21,050地点、林地416地点)で、各都道府県の不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえて知事が正常価格を判定したものだ。

結果は、日本の不動産市場が大きく三つに割れていることを示した。全国平均では住宅地が1.0%上昇したが、これを圏域別に見ると、東京圏と大阪圏が買い手マネーを吸収し、地方圏は事実上の足踏み状態に陥っている。

三大都市圏と地方の深い溝

全国平均の内訳は以下の通りだ。

住宅地の対前年平均変動率 | 圏域 | 変動率 | |------|--------| | 東京圏 | +4.0% | | 大阪圏 | +2.3% | | 名古屋圏 | +1.5% | | 地方圏 | +0.1% | | 全国平均 | +1.0% |

東京圏の住宅地が4.0%上昇した一方で、地方圏は0.1%。この11倍の格差は、数字以上の経済格差を物語っている。東京圏の上昇が全国平均を1.0%へと押し上げている。地方圏の大半の都市は、ほぼ横ばいか微増に留まっている。

商業地の構図はさらに顕著だ。東京圏は8.9%上昇、大阪圏は6.8%上昇。これに対して地方圏は0.9%。投資家マネーが、駅前商業地といえども都市部に集約され始めている。

工業地だけが比較的均等に上昇している(全国平均3.3%)が、これは物流施設など特定用途への機械的な需要を反映しており、広い経済活動を示すものではない。

「都心回帰」は終わらない

東京圏の内訳を詳しく見ると、東京都の住宅地が5.8%上昇、周辺県は埼玉1.6%、千葉3.4%、神奈川3.1%だ。周辺県も上昇しているが、東京都との差は明らかだ。

さらに細かく見ると、東京23区が特に強く、商業地では19.1%上昇した台東区、文京区17.8%、中野区・杉並区17.5%というように、これまで割安だった内環状線内側のエリアまで上昇率が拡がっている。

この動きの背景には、複数の要因がある。一つは、リモートワークの浸透後も「駅近」の価値が弱まらず、むしろ「拠点回帰」による都心職場への通勤復帰が強まったこと。二つ目は、本土の資産家や国内ファミリーオフィスの買い需要が依然として都市部に集中していること。三つ目は、過去3年のインフレと金利上昇の中で、不動産を実物資産として買い直そうという機関投資家の動きだ。

香港の読者にとっての意味

日本の地価格差は、香港ファミリーオフィスの分散投資戦略に影響を与える。東京圏への集中は、地政学的リスク分散の価値を減らし、通貨分散の効果を弱める。一方、地方都市への低リスク投資は利回りに見合わない。東京への偏重は、日本不動産そのものの魅力を、特定地点の希少性に近づけている。

港元建ての資産を円に換える際の「日本不動産」という選択肢は、今や東京圏に限定される。大阪京都は観光需要で下支えされているが、その他の圏域での個別物件購入は、立地ごとの個別精査が必須になった。

来年の調査へ向けて

次の都道府県地価調査は令和9年(2027年)9月に発表予定。基準日は令和9年7月1日になる。この1年で、東京圏の過熱ぶりが持続可能か、あるいは金利環境の変化で調整が入るかが問われることになる。地方圏の復調は、中央銀行の金融政策と円相場に左右される。

国土交通省は毎年この時期に調査結果を公表し、地域ごとのデータを不動産情報ライブラリで提供している。地点別の詳細データはそこから検索できる。