香港の秋は、九日間になった

今日は9月24日、木曜日。香港の秋のオークションは、まだ入口にいる。フィリップスの時計のオンライン・セールが、香港時間の午後2時にロットを閉じはじめる。158点、時計だけの売り立てである。

本番は来週に置かれている。サザビーズが9月28日、クリスティーズが9月29日と30日。だが今季は、その二社では終わらない。フィリップスは宝飾のオンライン・セールを9月30日に、現代美術のオンライン・セールを10月2日に閉じる。香港の秋は、9月24日から10月2日までの九日間になった。

三社を並べておく。サザビーズとクリスティーズはロンドンに発した国際競り会社で、いずれも香港をアジアの拠点にしている。クリスティーズのアジア太平洋本部は中環のThe Hendersonに入っている。フィリップスは三社のうち最も小さいが、香港では時計と宝飾をオンラインで大量にさばく。同じ街の同じ九日間に、性格の違う三社が並んだ。

3社の自社ページから数えた、11場975点

三社とも、香港の秋の出品数をまとめては公表していない。そこで本誌が各社の自社ページの出品リストを読み、香港で開かれる、または閉じるセールと、その出品数を並べた。数字はすべて各社自身の記載である。

日付(香港時間)ハウスセール出品数
9月24日(木)11:00サザビーズハンドバッグ&アクセサリー189
9月24日(木)14:00フィリップスウォッチズ・オンライン:香港セッション(2026年秋)158
9月28日(月)18:00サザビーズザ・フジタ・レキシコン:ルイス・コレクションより15
9月28日(月)18:30サザビーズモダン&コンテンポラリー・イブニング・オークション55
9月29日(火)12:00サザビーズモダン・デイ・オークション71
9月29日(火)15:00サザビーズコンテンポラリー・デイ・オークション58
9月29日(火)19:00クリスティーズ20th/21st Century Evening Sale51
9月30日(水)12:00フィリップス香港ジュエルズ:オンライン・オークション130
9月30日(水)13:30クリスティーズ20th Century Day Sale68
9月30日(水)16:30クリスティーズ21st Century Day Sale73
10月2日(金)14:00フィリップスモダン&コンテンポラリー・アート:オンライン、香港107
3社11場975

975点の内訳は、サザビーズが5場388点、フィリップスが3場395点、クリスティーズが3場192点。出品数だけを見れば、いちばん小さいはずのフィリップスが首位に立つ。理由は単純で、同社の395点のうち288点は時計と宝飾、つまり手に取って状態を確かめる必要のない品である(サザビーズのハンドバッグ189点も同じ性格だ)。

美術品に限ると、話は変わる。サザビーズの美術4場は199点、クリスティーズの3場は192点、フィリップスの現代美術は107点。合わせて498点。数字を並べるだけでは見えないのは、順番のほうである。

火曜日の三場、二社

来週の生の競りは7場、391点。ここに今季の構造が出ている。

サザビーズが先に立つ。9月28日(月)の午後6時に「ザ・フジタ・レキシコン」、同じ夜の6時30分にモダン&コンテンポラリー・イブニング。クリスティーズは翌29日の午後7時にイブニングを置いた。つまり火曜日は、サザビーズのモダン・デイ(正午)とコンテンポラリー・デイ(午後3時)が終わったあとに、クリスティーズのイブニングが始まる。一日のうちに三場、二社、合わせて180点が同じ街で動く。

同じ週に二社のイブニングが並ぶのは、香港では珍しくない。珍しいのは、その間にサザビーズのデイ・セールが挟まっていることだ。予算を決めずに両方を見る買い手は、火曜の午後3時から午後7時までの四時間で、二社のあいだを行き来することになる。落札の判断は、移動しながらではできない。

デイ・セールの規模も書いておく。クリスティーズのデイ2場は141点、サザビーズのデイ2場は129点。イブニング2場は合わせて106点しかない。値段のつく場面は夜にあるが、点数のある場面は昼にある。

藤田嗣治が香港で17点、うち15点は単独売り立て

今季の香港で、日本人の作家がもっとも濃く集まっている場所は、サザビーズの月曜午後6時である。

「ザ・フジタ・レキシコン:ルイス・コレクションより」は、藤田嗣治(レオナール・ツグハル・フジタ、1886〜1968年)の作品15点だけを並べた単独売り立てだ。サザビーズの自社ページに出ている15点のエスティメートを本誌が読み出して合計すると、下限が1,650万香港ドル、上限が2,430万香港ドル。もっとも高いのは第3番「Le rêve (Hommage à La Fontaine)」の400万〜600万香港ドル、もっとも低いのは第4番「Madeleine endormie」と第6番「Petit garçon」の各30万〜50万香港ドルである。

同じ週のクリスティーズにも、藤田は2点ある。9月30日の20th Century Day Sale、第129番「Femme brune se reposant ou Kiki de Montparnasse」が85万〜180万香港ドル、第131番「Jeune femme en buste」が20万〜30万香港ドル。どちらもデイ・セールで、夜ではない。

二社合わせて藤田は17点、エスティメート下限の合計は1,755万香港ドル。サザビーズが単独売り立てにした15点と、クリスティーズがデイ・セールに混ぜた2点。同じ画家の同じ週の扱いが、これだけ違う。

クリスティーズ192点のうち、日本勢は24点

次に、クリスティーズの3場192点を作家名で数えた。本誌が読み出したのは各ロットの作家表記と估価で、社名や国籍の判断は含んでいない。日本出身と確認できる作家のロットは24点、12.5%である。

内訳は、草間彌生5点、加藤泉3点、奈良美智2点、加賀温2点、藤田嗣治2点、石田徹也、児島善三郎、白髪一雄、名和晃平、野又穫、村上隆、高野綾、六角彩子、田名網敬一、西村有が各1点。24点のエスティメート下限を合計すると1億497万香港ドル、上限は1億5,270万香港ドルになる。クリスティーズの192点全体の下限合計6億5,725万香港ドルに対して、点数では12.5%、金額では約16%を占める。

点数の比率より金額の比率が高い。これは草間彌生の一点が効いている。第5番「A-Pumpkin (YHP)」のエスティメートは4,800万〜6,800万香港ドルで、24点の下限合計の七割近くを一人で持っていく。草間の5点だけで下限7,230万香港ドル、日本勢24点の下限合計1億497万香港ドルの69%にあたる。日本の作家の存在感は、人数ではなく金額で測ったほうが実態に近い。

(サザビーズの残り3場については、本誌は出品リストの一部しか読めておらず、日本勢の全数は数えていない。数えていないものを数えたふりはしない。)

この一週間をどう使うか

香港に住む読者と、東京から見ている読者の両方に、同じことを言っておく。今季は「秋のオークション週」という塊が壊れて、九日間に伸びた。だから予定を立てるときの単位は、セールではなく日付である。

まず、動く前に何を確かめるかを決める。クリスティーズは自社の購買案内ページに、買い手手数料は落札した買い手が「落札額に基づいて」支払うものだと明記している(2026年9月1日付)。つまりエスティメートは、あなたが払う額ではない。手数料はハウスごとに、部門ごとに違い、率は各社が自社の条件で公表している。同じ絵を同じ値段で落としても、ハウスが違えば請求額は違う。落札の前に読むべきなのは、カタログではなく条件のほうである。

次に、順番を味方につける。火曜日の午後は、サザビーズのデイ2場で相場を見てから、クリスティーズのイブニングに入れる。月曜の夜にサザビーズの藤田15点を見て、翌日のクリスティーズの予習に戻ることもできる。難しいのは、一日に三場ぶんの判断を保つことだ。

そして、日本の作家を追っている読者にとっては、月曜午後6時の15点が今季の本番である。単独売り立ては、一点ごとの出来が価格に直結する場だ。前後に並ぶロットの値段で薄まることもなければ、助けられることもない。カタログの来歴欄を先に読んで、現物を見る時間をそこに割り当てる価値がある。

東京と香港のどちらで買うか迷っているなら、今季は香港に判断材料が多い。藤田は日本でも売られる画家だが、香港の単独売り立ては15点というまとまった数で、かつ9月28日に一度で終わる。同じ画家のデイ・セール混在ロットが9月30日に控えている。二日違いで、同じ画家の値段がどう扱われるかを見比べられる週は、そう多くない。

次の日付

香港の今季で最後に槌が落ちるのは、10月2日午後2時にロットを閉じはじめるフィリップスの現代美術オンライン・セールである。その手前、9月30日正午には同社の香港ジュエルズが閉じる。9月30日の午後1時30分と4時30分にはクリスティーズのデイ2場がある。

その先の日付も書いておく。クリスティーズの予定では、香港の次のセールは11月24日、同じThe Hendersonで開かれるマグニフィセント・ジュエルズ・アンド・ジェイダイト(Magnificent Jewels & Jadeite)の秋拍である。カタログは10月に出る。今週の192点が宝石に置き換わり、エスティメートの桁が上がる——同じ部屋が、二か月後に別の値段の階段を並べる。

今月15日のクリスティーズ・ニューヨークで、広重「亀戸梅屋舗」のデラックス版が358,400ドルになった話も、本誌は同じ方法で読んだ。落札価格から手数料を割り戻して槌音を出し、5年前の同じ図柄と並べた記事である(広重「亀戸梅屋舗」が358,400ドル——浮世絵の値段は誰が決めるのか)。香港の17点は、まだ値段がついていない。つくのは9月28日と30日である。