9月の相場表を、五つの数字に開く

2026年9月の東京の会員権相場表には、コースごとに四つか五つの数字が並んでいる。会員権そのものの値段、名義書換料、入会預託金、年会費。同じ表の別のコースでは預託金の欄が空っぽで、代わりに株主とだけ書いてある。どれが入会の値段なのか。

相場表は業者が作る参考値であって、クラブの公式価格ではない。9月6日更新の有賀園ゴルフの東京都正会員権の表、9月17日更新の綜合ゴルフサービスの東京都の表、9月19日更新で9月18日欄まで日次で動くゴルフホットラインの東京表——三社を並べると、同じコースでも中心相場が数百万円ずれる。ずれの正体は算出法の違いで、買う側にとっては「どの表を見たか」が支払額を変えるという意味しかない。

会員権代金だけでは足りない

綜合ゴルフサービスは、表の数字の作り方を明記している。概算取得価格とは「会員権代金」「名義書換料」「入会預託金」の合計で、取扱手数料は別途。手数料は会員権代金の2%、275万円以下は一律55,000円。この定義をそのまま検算すると、東京よみうりカントリークラブの正会員は2,325万円+330万円+500万円=3,155万円で、表の3,155万円と一円まで合う。同社の表にある東京5コースすべてで、この足し算は一致した。

足す順番に法的な意味はない。意味があるのは、経済産業省が公開している書面の様式が同じ足し算を要求していることだ。関東経済産業局の「書面作成例(契約後の交付書面)」は、会員契約適正化法5条2項5号の記載欄に「入会金」「預託金」「その他の金銭」「合計」の四列を置く。近畿経済産業局の重要事項説明書の例も同じ形だ。所管官庁の雛形が合計欄を持つということは、入会時にいくら出るのかは、事業者自身が一枚の紙で示すべき数字ということになる。

五つのコース、五つの入会総額

ここから先は本紙の計算である。2026年9月17日時点の綜合ゴルフサービスの東京都の表(正会員)に、同社公表の手数料と各コースの年会費を足した。単位は万円。

東京よみうりカントリークラブ(株式会社よみうりランド経営)は概算取得価格3,155万円、手数料46.5万円、初年度年会費7.7万円で3,209万円。多摩カントリークラブ(稲城市坂浜、多摩興産経営)は1,255万円+18.5万円+7.7万円で1,281万円。東京国際ゴルフ倶楽部は462.5万円+5.5万円+6.6万円で474.6万円。立川国際カントリー倶楽部は412万円+5.5万円+5.5万円で423万円。東京五日市カントリー倶楽部は112.5万円+5.5万円+5.5万円で123.5万円。最高と最低で26倍の開きがある。

年会費は入会の一度きりの費用ではない。それでも初年度の現金は、この五つの数字の合計として実際に出ていく。相場表の見出しに載る金額は、いつも五つのうちの一つ目だ。

名義書換料の欄は何を数えているか

同じ表の「名義書換料」の欄が、クラブの告知と一対一で対応しないことがある。小金井カントリー倶楽部(東京都小平市、小金井ゴルフ経営)の例がはっきりしている。

クラブの告知は二本に分かれている。令和8年1月1日付で正会員の入会金を550万円から1,100万円へ、年会費を33万円から66万円へ改定する。名義書換料は1,100万円で変更なし。入会費用の合計は1,650万円から2,200万円になる——これは2025年12月11日付でゴルフホットラインが伝え、翌12日につばさゴルフが同じ内容を出している。ところが9月6日更新の有賀園ゴルフの表の名義書換料欄には、2,200と入っている。入会費用の合計と、名義書換料の欄の数字が同じなのだ。

AIゴルフ総研の2026年3月期レポートも、小金井CCの名義書換料を1,650万円から2,200万円への値上げとして表に載せている。クラブが二本に分けた告知を、表が一本にまとめている。だから「名義書換料330万円」と「名義書換料2,200万円」を横に並べて安い高いを言うのは、比較になっていない。額は面談の前に、名義書換料と入会金を分けて書いた書面で確かめる。

具体的な中身は、クラブの会則まで降りると見える。パシフィックゴルフが公開している千葉国際カントリー倶楽部の会則(2026年1月1日から改定施行)は、第13条で入会金および預託金または名義変更料を支払うと定め、入会金と名義変更料は返還しないと明記する。預託金は第14条で無利息・無配当、据置期間の経過後かつ会員契約の解除後に請求により返還とされ、その据置期間は、2015年7月8日以降に新たに会員資格を取得した会員については取得日から20年間。同じ条は、天災地変や社会情勢の著しい変化があれば理事会の同意を得て据置期間を延長できるとも書く。第17条第3項は、承認を得た譲受人が名義変更料を支払うとし、第5項は、会社が権利の譲渡による名義変更手続を一定期間停止することができるとする。相場表の「停止」の印は、この条項の行使だ。

東京よみうりカントリークラブが自社サイトで公開している利用約款も、適用の順序を「東京よみうりカントリークラブ会則及び、細則等によるほか、本約款」と書く。会則本体は公開されていない。金額の一次情報は、会則と法定の書面の側にある。

預託金は、あとで戻る金ではなく、いま出ていく金

五つのコースで、入会預託金は同じ扱いをされていない。東京よみうりカントリークラブの正会員は500万円、立川国際カントリー倶楽部は70万円。多摩カントリークラブ、東京国際ゴルフ倶楽部、東京五日市カントリー倶楽部の表では、この欄が空になっている。名義書換料が同じ330万円でも、東京よみうりと多摩では入会時に出る現金が500万円違う。

預託金が何に対する権利なのかは、預託金はクラブの借金——ゴルフ会員権で買う権利を分解するで扱った。ここで足すべきは、その金額と据置期間と、返還を担保する措置があるかどうかが、契約時に交付される法定の書面に載るという事実だ。その様式例では、預託金額・据置期間・契約締結予定数・合計金額の表に続けて「担保措置の有無」の欄が置かれ、記入例は「無し」になっている。会員契約適正化法12条は、書面を受領した日から起算して8日を経過する日までの間、会員が書面により契約を解除できるとし、同条4項は会員に不利な特約を無効とする。この8日の時計が動き出すのは、書面が実際に渡された日からだ。

年会費のほうが相場を動かしている

入会のときに一度払う金額より、毎年の年会費のほうが会員権の値段を動かしている——これがAIゴルフ総研の2026年3月期レポートの結論である。同レポートは2025年1月から2026年1月の1年間を対象に、1都3県の市場流通207コースを調べた。年会費を上げたのは63コースで、東京は15コース中3コース。上げたコースだけの平均は東京都で145,933円から265,833円へ82.2%上がり、値上げ率を引っ張ったのは小金井CCの33万円から66万円への改定だと特定している。会員権の平均相場は、年会費を上げた東京のコースで1,916万円から1,684万円へ12%下がり、年会費を据え置いたコースでは761万円から798万円へ4.9%上がった。

名義書換料の値上げは、年会費ほど相場を動かしていない。同じレポートの一覧では、東京都の小金井CCが1,650万円から2,200万円、八王子カントリークラブが110万円から220万円へ名義書換料を上げている。桜ヶ丘カントリークラブ(京王電鉄系)は2026年1月7日付の告知で、令和8年4月1日から平日会員の名義書換料を165万円から220万円へ上げ、正会員・週日会員の名義書換料と入会預託金は変更しないとしている。9月時点の東都ゴルフの東京表でも、桜ヶ丘CCの名義書換料は正会員330万円、平日会員220万円、週日会員110万円、入会預託金は300万円・200万円・100万円と、クラブの告知と一致する。同じ表の青梅ゴルフ倶楽部は名義書換料110万円・入会預託金200万円で、同倶楽部が2020年12月21日付で出した株主募集の条件(名義書換料100万円・税別、入会預託金200万円)の預託金側と合う。

香港の読者にとって

2p.hkの読者が東京の会員権を買うとき、最初に見るのはたいてい円建ての一つの数字だ。だがその数字は五つのうちの一つ目で、二つ目から五つ目は表の別の列と、面談のときに初めて出てくる書面に散っている。

順番は決まっている。どの表の、いつの時点の数字なのかを確かめる。名義書換料と入会金が分けて書かれているかを確かめる。預託金の額と据置期間、そして返還を担保する措置の有無を、法定の書面で確かめる。ここまで読んでから、初年度の現金合計を自分で足す。香港のクラブで見慣れた「入会の値段」という一つの数字は、東京では存在しない。存在しない数字を前提に交渉すると、あとから数百万円が足りなくなる。

同じ作法はオークションで買う作法——2026年、槌音ではなく請求書から逆算するで書いた。競り落とす値段ではなく、請求書の合計から逆算して入札額を決める。会員権も、表の一列目ではなく入会総額から逆算して候補を絞る。

次に動くのは、10月の表と12月の告知

この秋に読者が自分で確かめられる時点は二つある。一つは相場表の更新だ。ゴルフホットラインの東京表は9月19日更新で9月18日欄まで日次で動き、有賀園ゴルフの東京都の表は9月6日更新、綜合ゴルフサービスは9月17日更新。次は10月の月次更新になる。もう一つはクラブの改定で、年会費と入会金は1月1日実施が多い。小金井カントリー倶楽部は令和8年1月1日付で実施し、その告知は前年12月11日に出た。令和9年1月1日付の改定通知も、例年12月前後に業者各社から出る。

候補コースを一つ決めて、9月時点の概算取得価格を紙に写しておく。10月の表でその数字が動いたか、12月の告知で年会費が変わったか。入会総額が上がったのか下がったのかは、その二つを並べれば自分の数字で判定できる。