国外財産調書で最初に間違えるのは、金額ではない。判定の日である。その年の12月31日、国外にある財産の価額の合計が5,000万円を超えていれば、翌年6月30日までに一枚を出す。2026年分の判定日はまだ来ていない。暮れの残高が、来夏の義務を決める。

誰が捕まるのか

出すのは、12月31日の現況で居住者に当たる者である。非永住者(国籍が日本になく、過去10年以内の国内居住期間が5年以下の者)は外れる(国税庁No.7456、通達5-1)。

線は法律にある。国外送金等調書法5条1項が「五千万円を超える」と書き、政令に委ねていない。ちょうど5,000万円は入らない。国外財産とは「国外にある財産」である(同法2条21号)。有価証券等に絞った列挙ではない。

置き場所は相続税法から借りている(国外送金等調書令10条1項)。相続税法10条は、預金は受け入れ営業所、株式は発行法人の本店、貸付金は債務者の住所、不動産はその所在、と決める。書類の置き場では決まらない。

一枚に何を書くのか

氏名、住所又は居所、個人番号。そして国外財産の種類、数量、価額、所在(法5条1項)。記載は種類別、用途別、所在別に分ける(国税庁、通達5-4)。

価額は12月31日の時価、又は時価に準ずる見積価額(同令10条4項)。外貨建ては同日の売買相場で円に換算する(同5項)。どの相場かは通達が「対顧客直物電信買相場」と定める(通達5-11)。条文ではなく通達の仕事である。

合計表を添え、所得税の納税地(納税義務がなければ住所地)を所轄する税務署長へ。期限までに出さないで死亡し、又は出国したときは出さなくてよい(法5条1項ただし書)。

出さなかったときの値段

期限内に提出し、記載があれば、申告漏れが生じたときに過少申告加算税と無申告加算税が5%軽くなる。出さなければ5%重い。求められた書類の提示に応じなければ、軽減は消え、加重は10%になる(法6条1項・3項・7項)。

5%と5%と10%は法律にある。通達が引き受けるのは「重要なものの記載が不十分」の定義である——記載に誤りや欠けがあり、所得の基因となる国外財産の特定が困難な場合をいう(通達6-3)。偽りの記載と、正当な理由のない期限後の提出には、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(法10条)。

相続の日に効く

相続開始年の年分は、相続や遺贈で取得した国外財産(相続国外財産)を書かずに出せる。提出義務も、それを除いた合計で判定する(法5条2項)。自分の保有分が4,000万円なら、その年は出さなくてよい。翌年からは相続分を含めて判定する——除外は一度きりである。

12月31日にまだ分割されていなければ、各相続人が法定相続分であん分した価額で判定する(同令10条6項)。提出後に分割されても、再提出は要らない(同FAQ問16)。

置き場所は相続税法10条から借りているのに、切る時刻は違う。調書は12月31日、相続税法は取得した時の現況による(同令10条3項、相続税法10条4項)。

相続税の申告漏れで5%加重されるかは、三枚の調書で決まる。被相続人の相続開始年の前年分(前年分を出さないで死亡したときは前々年分)、相続人の相続開始年の年分、その翌年分である。どれか一つでも欠ければ加重になる(法6条4項2号)。翌年分の提出義務がない相続人などは外れる(法6条5項)。

「責めに帰すべき事由がない場合」も加重しない。通達はこれを、通常考えられる財産調査を尽くしたのに、被相続人が一部の相続人しか知り得ない方法で財産を管理していたため、期限までに存在を知らなかった場合とする(通達6-4の2)。前年分を出さないで死亡したとき、令12条が見るのは前々年分である。

国外財産調書は税務署に出す一覧であり、家族の資産の地図でもある。相続の日は選べない。その日に効く一枚は、毎年の暮れの残高から作られる。次の判定日は2026年12月31日、期限は2027年6月30日である。